CEO BLOG / 2026.10.22

CLOUDFLARE(クラウドフレア)という企業に注目している。
ウェブサイトの表示速度を上げたり、サイバー攻撃からサイトを守ったりする会社という認識を持っている人もいると思う。しかし、調べていくと、それだけではないことが分かった。
Cloudflareは、AIを動かすための基盤や、AIを活用したアプリケーションを開発・公開するためのサービスにも力を入れている。
なぜ、AWSやGoogle Cloudのような巨大な競合サービスが存在するなかで、Cloudflareが注目されているのか。
今回は、その事業内容と、AI時代における可能性について整理してみたい。
1. Cloudflareとは何をしている会社なのか?
Cloudflareは、2009年に設立された米国の企業だ。
主な事業は、インターネット上のウェブサイトやアプリケーションを、速く、安全に、安定して動かすためのサービスを提供すること。
例えば、企業のウェブサイトにアクセスするとき、通常は、その企業が契約しているサーバーからデータが送られてくる。
しかし、アクセスが集中すれば、サーバーに負荷がかかる。海外からアクセスすれば、通信に時間がかかることもある。悪意のある攻撃を受ければ、サイトが停止する可能性もある。
Cloudflareは、世界各地に配置したネットワークを活用し、こうした問題を解決する。
具体的には、次のようなサービスを提供している。
高速化: ウェブサイトの画像やデータを効率よく配信する。
セキュリティ: 不正アクセスやDDoS攻撃などからウェブサイトを守る。
ネットワーク: 世界中のユーザーとサーバーを効率的につなぐ。
開発基盤: アプリケーションを実行し、インターネット上に公開するための環境を提供する。
つまり、Cloudflareは単にウェブサイトを高速化する会社ではない。
インターネット上でサービスを運営するために必要な機能を、幅広く提供している企業なのだ。
2. AWSやGoogle Cloudがあるのに、なぜCloudflareが必要なのか?
ここで疑問が生まれる。
AWSやGoogle Cloudも、世界中にデータセンターやネットワークを持っている。ウェブサイトの高速化やセキュリティに関するサービスも提供している。
それなら、Cloudflareを使う必要はないのではないか。
実は、AWSやGoogle CloudとCloudflareは、競合する部分もあるが、役割が完全に同じというわけではない。
例えば、AWSでウェブサイトを運営している企業が、Cloudflareを組み合わせて利用することもできる。
この場合、AWSがウェブサイトのデータやアプリケーションを動かす場所となり、Cloudflareがその手前で通信の高速化やセキュリティ対策を担う、といった構成が可能だ。
もちろん、AWSにもCloudFrontなどの高速配信サービスがあり、セキュリティ対策も提供されている。
したがって、Cloudflareがあらゆる面でAWSより優れているという話ではない。
Cloudflareの強みは、高速化、セキュリティ、ネットワーク、開発機能などを組み合わせて利用でき、既存のサーバー環境にも導入しやすいことにある。
また、無料プランから始められるサービスもあり、小規模な開発者や企業が利用を始めやすい点も特徴だ。
分かりやすくいうと、企業のコーポレートサイトやちょっとしたメディアサイトなんかは無料でサイトを公開できる。もちろん独自ドメインも設定可能。レンタルサーバーは借りなくてもいいレベル。
3. なぜウェブサイトを無料で公開できるのか?
一般的にウェブサイトを公開するには、レンタルサーバーを契約する必要がある。
しかし、Cloudflare Pagesを使えば、HTMLやCSS、JavaScriptなどで構成された静的なウェブサイトを公開できる。
一定の条件を満たす静的コンテンツの配信は、無料プランでも利用できる。
なぜ無料で提供できるのだろうか。
理由の一つは、静的なウェブサイトの配信は、一般的に、データベースへの問い合わせやサーバー側での複雑な処理を伴うサイトに比べて、効率よく配信しやすいからだ。
もう一つは、無料サービスが開発者や企業にCloudflareのサービスを使ってもらう入口になることだ。
最初は無料でウェブサイトを公開するだけだったユーザーも、サービスが成長すれば、データベースや認証、セキュリティ対策、アプリケーションの実行環境など、より高度な機能が必要になる可能性がある。
そこで、有料サービスを利用してもらう。
つまり、無料サービスは単なるサービスのばらまきではなく、将来の顧客を獲得するための仕組みとしても機能する。
ただし、すべてのウェブサイトを無料で運営できるわけではない。
例えば、PHPとデータベースを使う一般的なWordPressサイトを、そのままCloudflare Pagesに移すことはできない。WordPressを動かすには、対応する実行環境やデータベースなどが別途必要になる。
ここから、次のテーマにつながってくる。
4. AIの進化によって、WordPressの価値は変わるのではないか?
今後はよりAIと相性の良いプログラミング言語やツールが使われるようになると思う。
現在、ウェブサイトを制作・管理する方法の一つとして、WordPressが広く使われている。
WordPressの強みは、プログラミングの専門知識がなくても、管理画面から記事を書いたり、画像を追加したり、サイトを更新したりできることだ。
しかし、AIの進化によって、この前提が変わる可能性がある。
例えば、これまでは人間が管理画面を操作して、記事を書き、画像を配置し、レイアウトを調整して、サイトを公開していた。
これからは、AIに「企業の紹介ページを作って」「最新の情報に更新して」と指示するだけで、制作から公開まで自動化できる。
そうなると、人間が使いやすい管理画面を提供することの価値は、相対的に下がるだろう。
変化するとすれば、情報を管理する仕組みは残りながら、人間が管理画面を操作するのではなく、AIが必要な機能を操作する形へ移行していくことではないだろうか。
5. CloudflareはAI基盤にも進出している
ここで、Cloudflareの今後を考えるうえで重要なのが、AI関連サービスへの展開だ。
Cloudflareは、ウェブサイトの高速化やセキュリティだけでなく、AIモデルを動かしたり、AIを活用したアプリケーションを開発したりするためのサービスも提供している。
代表的なものを紹介する。
Workers AI:AIモデルを動かす
Workers AIは、Cloudflareの基盤上で対応するAIモデルを実行するためのサービスだ。
AIを使ったチャットボットなどを開発する際、用途によっては、自分でGPUサーバーを調達して運用する必要がなくなる。
AI Gateway:AIへのリクエストを管理する
AIを使ったアプリケーションでは、OpenAIやAnthropicなど、外部企業が提供するAIモデルを利用することも多い。
AI Gatewayは、こうしたAIへのリクエストを管理し、利用状況の分析やキャッシュなどを支援する。
つまり、Cloudflare自身がすべてのAIモデルを開発しなくても、他社のAIモデルを利用する企業を支えることができる。
Vectorize:AIが情報を検索するための基盤
AIに社内資料や商品情報を参照させ、質問に答えさせたい場合、関連する情報を効率よく検索する仕組みが必要になる。
Vectorizeは、AIアプリケーションで利用するベクトルデータを保存・検索するためのサービスだ。
AIエージェントを開発するための基盤
さらに、AIに単に質問へ回答させるだけでなく、情報を集めたり、ツールを使ったり、複数の作業を順番に進めさせたりする技術も発展している。
こうしたAIエージェントを開発するための仕組みも、Cloudflareのサービス展開の一部だ。
このように、CloudflareはAIモデルそのものを提供するだけでなく、AIを使ったサービスが動くための環境を整えようとしている。
6. AI時代にCloudflareが注目される理由
ここまでの話をつなげると、Cloudflareの戦略が見えてくる。
これからAIの性能が向上し、誰でも簡単にウェブサイトやアプリケーションを作れるようになったとする。
すると、世の中には、これまでより多くの小規模なウェブサービスやアプリケーションが生まれる可能性がある。
個人や小さな企業でも、AIを使ってサービスを開発できるようになるからだ。
しかし、アプリケーションを作ることと、それをインターネット上で安定して動かすことは別の問題だ。
公開する場所が必要になる。データを保存する必要もある。ユーザーが増えれば、通信や処理を効率化しなければならない。セキュリティ対策も必要になる。
Cloudflareは、こうした課題の一部をまとめて解決するためのサービスを提供している。
つまり、AIによってサービスを作るハードルが下がるほど、それらのサービスを動かすための基盤にも新たな需要が生まれる可能性がある。
ここが、Cloudflareの将来性を考えるうえで面白いポイントだ。
もちろん、AWSやGoogle Cloudなども同じ市場を狙っている。AIアプリケーションが増えたからといって、必ずCloudflareがその需要を獲得できるとは限らない。
今後は、料金、性能、使いやすさ、開発者からの支持などが競争を左右するだろう。
7. まとめ:ウェブサイトを作る会社から、ウェブサービスを動かす基盤へ
今回、Cloudflareについて調べて感じたのは、単なるウェブサイトの高速化・セキュリティ企業として捉えるだけでは、その可能性を十分に理解できないということだ。
Cloudflareは、ウェブサイトの配信や保護に加え、アプリケーションの実行環境やAI関連の開発基盤にも事業を広げている。
そして、AIがウェブサイトやアプリケーションの制作・更新を自動化していくなら、これまで人間が操作していたツールの役割も変わるかもしれない。
従来は、人間が管理画面を操作し、サーバーを用意し、さまざまなツールを組み合わせてサービスを作っていた。
しかし将来は、AIに指示することでサービスを作り、その裏側で必要な処理をクラウド基盤が担う、という形が広がる可能性がある。
そのとき、Cloudflareのように、世界規模のネットワークとセキュリティ、開発基盤を持つ企業は、重要な役割を果たすかもしれない。
AIが何を作れるようになるかだけでなく、AIが作ったものを、どこで、どのように動かすのか。
これからのAI時代を考えるうえでは、AIモデルを開発する企業だけでなく、その裏側を支えるインフラ企業にも注目していきたい。
追記
2026/10/21にPHPの脆弱性でいろんなサイトが影響を受け、サイトを一時閉鎖したり、攻撃対象になるということが起こりました。
PHPはそれくらいいろんなサイトで使われているプログラミング言語で、Wordpressで作られたサイトにとっては恐怖だったと思う。(世界の4割のサイトがWordpressでできているらしい)
以前から私たちも「レンタルサーバー + WordPress」という構成を見直す必要があると思っていたが、今回の件でそれが確信になった。AIでサイトを作ったり更新する時代に、もはや人間用の管理画面などは不要と思う。
CLOUDFLARE+Astroの構成に、TypescriptやNext.jsなどのAIフレンドリーな言語でサイトを構築していくというのがこれから主流になっていくでしょう。
※本記事は、Cloudflareの事業内容とAI時代の変化について整理したものです。将来に関する記述は筆者の考察であり、Cloudflareの成長や投資成果を保証するものではありません。
参考資料
Cloudflare公式サイト
Cloudflare Pagesの公式ドキュメント
Cloudflare Workers AIの公式ドキュメント
Cloudflare AI Gatewayの公式ドキュメント
Cloudflare Vectorizeの公式ドキュメント